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外国税額控除というのは、いろいろなケースが考えられるので、実はけっこう複雑怪奇です。(笑)
しかしそれはあらゆるケースをすべて網羅しようとするからであって、単発の単純な取引であれば、さほど難しくはありません。
制度の趣旨としては、国外で生じた所得(利益)に対する外国税と、日本の法人税との二重課税を排除するために設けられています。
つまり、外国で払った税金を、日本の法人税から差し引いていいですよというわけです。
<用語解説>
この外国税額控除の解説書を読んでいるとたびたび「外国所得税」という言葉がでてきます。
この言葉の意味は、「外国で生じた所得(利益)に対して課された税金」という意味です。
外国の「所得税」だけという狭い意味ではありません。
具体的には、外国の法人税、外国の源泉所得税、外国の住民税などが該当します。
今回のケースは外国源泉所得税なので特に問題はありません。
外国税額控除で押さえるべきポイントは3つあります。
(1)会計上の処理
(2)別表4の調整
(3)別表1の計算
です。
(1)会計上の処理
源泉徴収された外国所得税についての処理が問題となります。
イ.コンサルタント料の手取額270万円のみを収益とする方法。
現金預金 270万円 / コンサルタント売上 270万円
ロ.コンサルタント料の総額300万円を収益とし、外国源泉税30万円を費用(「租税公課」、「法人税住民税事業税」など)とする方法。
現金預金 270万円 / コンサルタント売上 300万円
租税公課等 30万円 /
イ.とロ.はどちらでも当期純利益に与える影響はまったく同じになります。
今回はあとあとの説明が簡単なイ.又はロ.の方法で経理しているものとします。
「租税公課」でも「法人税住民税事業税」でも、損益計算書にマイナスの計算要素として計上されていることに変わりはありません。
また、ロ.の方法で仕訳したとしても、その後その「租税公課等」30万円を「コンサルタント売上」と相殺消去してしまえば、それは手取額部分270万円のみを収益に計上したイ.の方法とまったく同じになります。
したがって、この外国源泉税30万円はどちらで仕訳したとしても、法人税法上は「損金経理」されているものとして取扱います。(ここが重要。)
ハ.外国源泉税は資産とする方法(損金経理しない方法)。
現金預金 270万円 / コンサルタント売上 300万円
仮払税金 30万円 /
仮払金、立替金、仮払税金といった資産科目で仕訳する方法もありますが、法人税の別表での調整がややこしくなるので、今回は説明の都合上、ハ.の方法は採用しないものとします。
(2)別表4の調整
ここでは、会計上費用として損金経理された外国所得税30万円について、あえて一度損金不算入にします。
会計上は費用になっているのですが、法人税の別表上だけで費用の取消しをします。
具体的には、別表4の「仮計」の下で、「控除対象となる外国税額」として30万円を加算します。
別表4で加算するということは、当期純利益に対して加算するという意味ですから、費用を取消すという意味になります。
法人税法上は、所得(当期純利益)の計算過程で「費用」としてマイナスするのではなく、法人税額の一部分として税額控除をするのです、とここで意思表示しておきます。
(会計上の仕訳はそのままです。いじってはいけません。)
一応ここの別表4の「控除対象となる外国税額」には、外国所得税のうち高率負担部分を除く、という規定があります。(実際の重要性は低い。)
その計算方法は、
その外国所得税の課税標準(課税対象金額)×50%
です。
日本の法人税・住民税・事業税の実効税率は、全部あわせても50%を超えることはありません。
したがって、もしも50%を超えるような高い税金を外国で取られていたとしても、それはその国独自の税金であり、日本の法人税等との二重課税になる部分ではないと考えているのです。
よって、50%を超えるような高率負担部分の外国所得税がもしあれば、その部分は税額控除できませんので、この別表4での加算金額からは除きます。
上記の結果、別表4の仮計の下で「控除対象となる外国税額」の金額は、
A.外国所得税 300,000円
B.外国税の課税標準(コンサルタント料)300万円×50%=150万円
AとBのいずれか少ない金額・・・ゆえにA.の金額300,000円
となります。
(3)別表1の計算
さて、最後にいよいよ法人税額から外国税をマイナス控除します。
ここで注意することは、当期の法人税額から控除するわけですから、当期は黒字で法人税がタップリあるということが前提です。
そうでない場合は、控除できなかった外国税は、翌期以降に繰越しすることができます。
この繰越控除の方法はなかなかややこしいので今回は説明を割愛します。
説明の都合上、当期の法人税額から300,000円全額控除できるものとします。
単発でちょっとコンサルタント収入があったくらいの話ですから、それ以外の通常の営業活動による所得(純利益)がたくさんあるものとします。
一応、ここの計算には、「控除限度額」というのがあります。
これがめんどくさいのですが、一応計算してみましょう。
<別表1における控除税額の全体>
次のAとBのうちいずれか少ない金額を別表1で法人税額から控除します。
A.別表4の仮計の下で加算した金額300,000円
B.控除限度額
「B.控除限度額」の計算方法の説明
国外の所得(国外純利益)は、国内の所得(国内純利益)とあわせて一緒に御社全体の当期の所得(損益計算書の当期純利益)になっています。
この国外所得(国外純利益)部分に対して課された日本の法人税の範囲内で、外国税額控除を認めてあげますよというのが、この「控除限度額」の意味です。
具体的な計算方法は、
当期の国外所得300万円
別表1・差引法人税額×------------------------------
当期の全所得(別表4・差引計)
となります。
「別表1・差引法人税額」と、「別表4・差引計」は自分で計算してください。
当然ですが、当期の決算が確定しないと計算できません。
この控除限度額の計算式をよくみると、当期の法人税額(別表1・差引法人税額)のうち、国外所得に対応する部分のみを求めていますね。
この国外所得に対する当期の法人税の範囲内で、税額控除を認めてあげますよというわけです。
なお、分子の「当期の国外所得」とは、次の計算式で求めます。
(国外収益300万円−国外費用30万円)+別表4加算額30万円=300万円
です。
実はこの分子の「当期の国外所得」というのが非常にややこしくて、最も難しいところです。
このコンサルタント売上を獲得する為に、いろいろな原価・費用が生じているのでしたら、ここの計算に反映させます。
今回はコンサルタント売上ということなので、物品の仕入や製造原価は生じていないでしょうから、特にたいしたものはないかもしれません。
強いていうなら、現地の調査会社に依頼した調査費用といったものがもしあれば、それはここの国外費用に含めて計算してください。
まあ、コンサルタント売上を獲得する為に個別的に生じた費用が特に何もなければ、外国源泉税(租税公課等)のみを国外費用とする上記の計算でOKです。
(このあたりの国外費用の細かい法律の規定については、申し訳ありませんが私も詳しくないのでよくわかりません。)
さらに、この分子の「当期の国外所得」についてはもうひとつ制限規定があります。(重要性は低い。)
それは、当期の全所得金額の最低10%は日本で生じた所得としてくださいな、というものです。
つまり、たとえ御社の所得の100%すべてが国外で生じたものであったとしても、そのうちの一割は日本の本社が貢献して獲得された所得としてくださいというものです。
したがって、仮に全所得のうち90%が国外所得であると仮定した場合の金額(別表4差引計×90%)が、もしも実際の国外所得金額よりも小さい場合には、この「別表4差引計×90%」の金額を分子の金額とします。
(そんなことはまず絶対ないと思いますが。)
こうして計算した「B.控除限度額」が、「A.別表4の仮計の下で加算した金額300,000円」よりも大きければめでたく全額控除して終了となります。
もしも「B.控除限度額」のほうが小さければ、控除しきれない外国税額が生じますが、その場合にはさらにその控除不足額についていろいろあるのですが、なかなかめんどくさいので今回は省略します。
これで外国税額控除の基本はだいたい説明できたかなと思います。
(とはいえ、やっぱりめんどくさいですよねぇ・・・。)
外国税額控除というのは、いろいろなケースが考えられるので、実はけっこう複雑怪奇です。(笑)
しかしそれはあらゆるケースをすべて網羅しようとするからであって、単発の単純な取引であれば、さほど難しくはありません。
制度の趣旨としては、国外で生じた所得(利益)に対する外国税と、日本の法人税との二重課税を排除するために設けられています。
つまり、外国で払った税金を、日本の法人税から差し引いていいですよというわけです。
<用語解説>
この外国税額控除の解説書を読んでいるとたびたび「外国所得税」という言葉がでてきます。
この言葉の意味は、「外国で生じた所得(利益)に対して課された税金」という意味です。
外国の「所得税」だけという狭い意味ではありません。
具体的には、外国の法人税、外国の源泉所得税、外国の住民税などが該当します。
今回のケースは外国源泉所得税なので特に問題はありません。
外国税額控除で押さえるべきポイントは3つあります。
(1)会計上の処理
(2)別表4の調整
(3)別表1の計算
です。
(1)会計上の処理
源泉徴収された外国所得税についての処理が問題となります。
イ.コンサルタント料の手取額270万円のみを収益とする方法。
現金預金 270万円 / コンサルタント売上 270万円
ロ.コンサルタント料の総額300万円を収益とし、外国源泉税30万円を費用(「租税公課」、「法人税住民税事業税」など)とする方法。
現金預金 270万円 / コンサルタント売上 300万円
租税公課等 30万円 /
イ.とロ.はどちらでも当期純利益に与える影響はまったく同じになります。
今回はあとあとの説明が簡単なイ.又はロ.の方法で経理しているものとします。
「租税公課」でも「法人税住民税事業税」でも、損益計算書にマイナスの計算要素として計上されていることに変わりはありません。
また、ロ.の方法で仕訳したとしても、その後その「租税公課等」30万円を「コンサルタント売上」と相殺消去してしまえば、それは手取額部分270万円のみを収益に計上したイ.の方法とまったく同じになります。
したがって、この外国源泉税30万円はどちらで仕訳したとしても、法人税法上は「損金経理」されているものとして取扱います。(ここが重要。)
ハ.外国源泉税は資産とする方法(損金経理しない方法)。
現金預金 270万円 / コンサルタント売上 300万円
仮払税金 30万円 /
仮払金、立替金、仮払税金といった資産科目で仕訳する方法もありますが、法人税の別表での調整がややこしくなるので、今回は説明の都合上、ハ.の方法は採用しないものとします。
(2)別表4の調整
ここでは、会計上費用として損金経理された外国所得税30万円について、あえて一度損金不算入にします。
会計上は費用になっているのですが、法人税の別表上だけで費用の取消しをします。
具体的には、別表4の「仮計」の下で、「控除対象となる外国税額」として30万円を加算します。
別表4で加算するということは、当期純利益に対して加算するという意味ですから、費用を取消すという意味になります。
法人税法上は、所得(当期純利益)の計算過程で「費用」としてマイナスするのではなく、法人税額の一部分として税額控除をするのです、とここで意思表示しておきます。
(会計上の仕訳はそのままです。いじってはいけません。)
一応ここの別表4の「控除対象となる外国税額」には、外国所得税のうち高率負担部分を除く、という規定があります。(実際の重要性は低い。)
その計算方法は、
その外国所得税の課税標準(課税対象金額)×50%
です。
日本の法人税・住民税・事業税の実効税率は、全部あわせても50%を超えることはありません。
したがって、もしも50%を超えるような高い税金を外国で取られていたとしても、それはその国独自の税金であり、日本の法人税等との二重課税になる部分ではないと考えているのです。
よって、50%を超えるような高率負担部分の外国所得税がもしあれば、その部分は税額控除できませんので、この別表4での加算金額からは除きます。
上記の結果、別表4の仮計の下で「控除対象となる外国税額」の金額は、
A.外国所得税 300,000円
B.外国税の課税標準(コンサルタント料)300万円×50%=150万円
AとBのいずれか少ない金額・・・ゆえにA.の金額300,000円
となります。
(3)別表1の計算
さて、最後にいよいよ法人税額から外国税をマイナス控除します。
ここで注意することは、当期の法人税額から控除するわけですから、当期は黒字で法人税がタップリあるということが前提です。
そうでない場合は、控除できなかった外国税は、翌期以降に繰越しすることができます。
この繰越控除の方法はなかなかややこしいので今回は説明を割愛します。
説明の都合上、当期の法人税額から300,000円全額控除できるものとします。
単発でちょっとコンサルタント収入があったくらいの話ですから、それ以外の通常の営業活動による所得(純利益)がたくさんあるものとします。
一応、ここの計算には、「控除限度額」というのがあります。
これがめんどくさいのですが、一応計算してみましょう。
<別表1における控除税額の全体>
次のAとBのうちいずれか少ない金額を別表1で法人税額から控除します。
A.別表4の仮計の下で加算した金額300,000円
B.控除限度額
「B.控除限度額」の計算方法の説明
国外の所得(国外純利益)は、国内の所得(国内純利益)とあわせて一緒に御社全体の当期の所得(損益計算書の当期純利益)になっています。
この国外所得(国外純利益)部分に対して課された日本の法人税の範囲内で、外国税額控除を認めてあげますよというのが、この「控除限度額」の意味です。
具体的な計算方法は、
当期の国外所得300万円
別表1・差引法人税額×------------------------------
当期の全所得(別表4・差引計)
となります。
「別表1・差引法人税額」と、「別表4・差引計」は自分で計算してください。
当然ですが、当期の決算が確定しないと計算できません。
この控除限度額の計算式をよくみると、当期の法人税額(別表1・差引法人税額)のうち、国外所得に対応する部分のみを求めていますね。
この国外所得に対する当期の法人税の範囲内で、税額控除を認めてあげますよというわけです。
なお、分子の「当期の国外所得」とは、次の計算式で求めます。
(国外収益300万円−国外費用30万円)+別表4加算額30万円=300万円
です。
実はこの分子の「当期の国外所得」というのが非常にややこしくて、最も難しいところです。
このコンサルタント売上を獲得する為に、いろいろな原価・費用が生じているのでしたら、ここの計算に反映させます。
今回はコンサルタント売上ということなので、物品の仕入や製造原価は生じていないでしょうから、特にたいしたものはないかもしれません。
強いていうなら、現地の調査会社に依頼した調査費用といったものがもしあれば、それはここの国外費用に含めて計算してください。
まあ、コンサルタント売上を獲得する為に個別的に生じた費用が特に何もなければ、外国源泉税(租税公課等)のみを国外費用とする上記の計算でOKです。
(このあたりの国外費用の細かい法律の規定については、申し訳ありませんが私も詳しくないのでよくわかりません。)
さらに、この分子の「当期の国外所得」についてはもうひとつ制限規定があります。(重要性は低い。)
それは、当期の全所得金額の最低10%は日本で生じた所得としてくださいな、というものです。
つまり、たとえ御社の所得の100%すべてが国外で生じたものであったとしても、そのうちの一割は日本の本社が貢献して獲得された所得としてくださいというものです。
したがって、仮に全所得のうち90%が国外所得であると仮定した場合の金額(別表4差引計×90%)が、もしも実際の国外所得金額よりも小さい場合には、この「別表4差引計×90%」の金額を分子の金額とします。
(そんなことはまず絶対ないと思いますが。)
こうして計算した「B.控除限度額」が、「A.別表4の仮計の下で加算した金額300,000円」よりも大きければめでたく全額控除して終了となります。
もしも「B.控除限度額」のほうが小さければ、控除しきれない外国税額が生じますが、その場合にはさらにその控除不足額についていろいろあるのですが、なかなかめんどくさいので今回は省略します。
これで外国税額控除の基本はだいたい説明できたかなと思います。
(とはいえ、やっぱりめんどくさいですよねぇ・・・。)
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