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代物弁済・・・消費税
2007/06/08 10:20
Re: 教えください。
2007/06/17 23:07
若干の誤りが見られるようです。
まずは、用語の定義を確認します。消費税法も法律のひとつなので、法律用語としての意味を確認する必要があります。なお、法律用語に拘泥すると却って分かりづらくなるため、若干の意訳を試みています(以下同様)。
1.対価
法律上、対価とは、財産・労務等を相手方へ提供または相手方から享受するときに、交換的に相手方から享受または相手方へ提供する財産上の利益をいいます。例えば、物を購入したとき、支払代金は購入物の対価ですし、購入物は支払代金の対価です。
消費税法でも、この意味で対価という用語を使用しています。
なお、対価は、経済的な数量が必ずしも一致するものではありません。
2.反対給付
法律上、反対給付とは、互いに向き合う対価のうち、一方の対価を中心に見たときのもう位置方の対価をいいます。例えば、物を購入したとき、購入物を中心に見れば支払代金は購入物の反対給付となりますし、支払代金を中心に見れば購入物が支払代金の反対給付となります。
消費税法でも、この意味で反対給付という用語を使用しています。
3.譲渡
法律上、譲渡とは、有償・無償に限らず、財産的価値を相手方へ移転させることをいいます。
消費税法でも、この意味で譲渡という用語を使用しています。この点、URLの紹介のあるタックスアンサーでは有償譲渡に限っているとも読めるような解説文になっていますが、これはもともと法文上「対価を得て行われる資産の譲渡」とされているものを解説用に言い替えたものと思われます。すなわち、「対価を得て」を有償に読み替えたものであって、「譲渡」そのものは無償譲渡をも包含していることに変わりありません。
なお、この場合に若干難しくしているのが、消費税法2条1項8号の定義規定です。ここでは、「資産の譲渡等」というひとまとまりの単語で、有償譲渡、利子付貸付(有償貸付)、有償役務提供およびこれらに準じるものをまとめて表しています。
したがって、消費税法に関する法令通達を見るときには、「資産の譲渡」と「資産の譲渡等」との使い分けに注意する必要があります。すなわち、前者は無償を含むところ、後者は無償を含みません。また、前者は譲渡のみであるところ、後者は貸付およびサービスも含まれます。
次に、民事法上の取扱いを確認します。税法上の取扱いは民事法上の取扱いを踏まえているので、先に確認する必要があります。
1.金銭貸借
金銭貸借(より正確には金銭消費貸借)は、金銭を後で返済することを条件にして、金銭を借り入れるものです。このとき貸し手は、無利子特約が無い限り、法律上当然に貸金だけでなく利子をも請求できます。
金銭貸借の対価関係は、貸付金と利子との間に見られます。貸付元本と元本返済とは対価関係にありません。元本の返済は貸し手の手元にあった金銭と同額の金銭を貸し手の手元に戻すことに過ぎず、交換的な関係ではないのです。
金銭貸借で分かりにくければ、物の貸借で考えてみてください。例えば、隣のデスクの人からボールペンを借りたとします。借りたボールペンを返したとき、借りた人が貸した人へ対価(反対給付)を与えたとはいえません。もともと相手の所有物であり、相手の手元にあった物を、再び相手の手元へ戻したに過ぎないからです。対価は、ボールペンを借りたお礼に何かをしてあげたときに生じます。
元本返済もこれと同じ理屈で、貸付金の対価にはなりません。借りたお礼に当たる利子が、貸付金の対価です。
なお、対価は経済的数量が必ずしも一致するものではないことに、ご注意ください。貸付金と利子とが金額的に異なっていても、これは対価関係にあります。
2.代物弁済
代物弁済は、債権者の承諾を得て、弁済すべき債務と異なる物(労務その他)を債権者へ提供し、債務消滅という財産的利益を得るものです。すなわち、提供する物と債務の消滅とが対価関係にあります。物の交換価値に着目したものです。
なお、両者の金額が一致している必要はありません。もっとも、代物弁済として提供された物の価額が消滅した債務の額よりも異常に高額であるときは、暴利行為として代物弁済そのものが無効となります。
これらを踏まえて、金銭貸借に係る元本・利子・貸付金および代物弁済の、消費税法上の取扱いを検討します。
1.貸付
貸付金は、既に述べたとおり、利子と対価関係にあります。
したがって、無利子特約のない貸付金の支払は、利子という「対価を得て行う資産の貸付」に該当するところ、消費税法ではこれを非課税としています。
また、無利子特約を付した貸付金の支払は、「対価を得て行う資産の貸付」には該当しないため、消費税の課税対象外(不課税)となります。この点については、消費税法基本通達5−4−5で注意的に規定されています。
2.元本の返済
元本の返済は、既に述べたとおり、貸付金や利子とは対価関係にありません。すなわち、元本の返済は他のいずれとも対価関係になく、これによって対価を得ることがありません。
したがって、元本の返済は「対価を得て行う資産の譲渡」「対価を得て行う資産の貸付」には該当しないため、(元本返済としての現金の授受も含め、)消費税の課税対象外(不課税)となります。
なお、「借入金/現金」という仕訳は、元本の返済という一個の行為を、借入金の減少と現金の減少とに分解したものです。この両者は対価関係にありませんから、借入金が現金の反対給付ということもありません。もっとも、消費税課税要件のひとつに「資産の譲渡」がありますので、上記仕訳では現金の減少=資産の譲渡に着目すべきことは、間違いないものと思われます。これが不課税となるのは、既に述べました。
3.利子
利子は、既に述べたとおり、貸付金と対価関係にあります。言い換えると、利子支払は貸付金という対価を得ておこなう財産の移転です。
したがって、利子の授受は「対価を得て行う資産の譲渡」に該当するところ、消費税法ではこれを非課税としています。
4.代物弁済
代物弁済は、既に述べたとおり、消滅する債務と対価関係にあります。
したがって、代物弁済は「対価を得て行う資産の譲渡」に該当し、消費税法に定める非課税の限定列挙事項に該当しませんので、課税取引となります。
なお、例えば、会社の借入に対して代表取締役が担保提供した不動産が、担保の実行により会社の借入金弁済に代えて代物弁済された場合など、個人の財産が代物弁済に供されたときは、「事業として」の要件を満たさないため不課税取引となります。消費税法基本通達5−1−1(注)1にて、その旨が注意的に掲げられています。(「事業のために」でなく「事業として」が要件であるため、このような結論となります。)
また、消費税関連図書等では、代物弁済を「資産売却および売却資金による返済」という形に分割して説明するものも見られ、これを踏まえたものと思われる投稿も見られますが、適切ではありません。
代物弁済で提供される物の価値は時価で評価するところ、この時価は売却額とは必ずしも一致しません。加えて、そもそも代物弁済は物の交換価値に着目して認められるものであって、売却価値に限った話ではありません。むしろ、代物弁済は売買を通さないことに意義があります。
したがって、消費税法の説明のために上記説明をすることで、その説明の基礎ないし前提であるはずの代物弁済の制度をミスリードしてしまうおそれがあります。ゆえに、好ましい説明とはいえません。若干の齟齬に目を瞑れば、などの前置き付であれば、許容範囲であろうと思います。
若干の誤りが見られるようです。
まずは、用語の定義を確認します。消費税法も法律のひとつなので、法律用語としての意味を確認する必要があります。なお、法律用語に拘泥すると却って分かりづらくなるため、若干の意訳を試みています(以下同様)。
1.対価
法律上、対価とは、財産・労務等を相手方へ提供または相手方から享受するときに、交換的に相手方から享受または相手方へ提供する財産上の利益をいいます。例えば、物を購入したとき、支払代金は購入物の対価ですし、購入物は支払代金の対価です。
消費税法でも、この意味で対価という用語を使用しています。
なお、対価は、経済的な数量が必ずしも一致するものではありません。
2.反対給付
法律上、反対給付とは、互いに向き合う対価のうち、一方の対価を中心に見たときのもう位置方の対価をいいます。例えば、物を購入したとき、購入物を中心に見れば支払代金は購入物の反対給付となりますし、支払代金を中心に見れば購入物が支払代金の反対給付となります。
消費税法でも、この意味で反対給付という用語を使用しています。
3.譲渡
法律上、譲渡とは、有償・無償に限らず、財産的価値を相手方へ移転させることをいいます。
消費税法でも、この意味で譲渡という用語を使用しています。この点、URLの紹介のあるタックスアンサーでは有償譲渡に限っているとも読めるような解説文になっていますが、これはもともと法文上「対価を得て行われる資産の譲渡」とされているものを解説用に言い替えたものと思われます。すなわち、「対価を得て」を有償に読み替えたものであって、「譲渡」そのものは無償譲渡をも包含していることに変わりありません。
なお、この場合に若干難しくしているのが、消費税法2条1項8号の定義規定です。ここでは、「資産の譲渡等」というひとまとまりの単語で、有償譲渡、利子付貸付(有償貸付)、有償役務提供およびこれらに準じるものをまとめて表しています。
したがって、消費税法に関する法令通達を見るときには、「資産の譲渡」と「資産の譲渡等」との使い分けに注意する必要があります。すなわち、前者は無償を含むところ、後者は無償を含みません。また、前者は譲渡のみであるところ、後者は貸付およびサービスも含まれます。
次に、民事法上の取扱いを確認します。税法上の取扱いは民事法上の取扱いを踏まえているので、先に確認する必要があります。
1.金銭貸借
金銭貸借(より正確には金銭消費貸借)は、金銭を後で返済することを条件にして、金銭を借り入れるものです。このとき貸し手は、無利子特約が無い限り、法律上当然に貸金だけでなく利子をも請求できます。
金銭貸借の対価関係は、貸付金と利子との間に見られます。貸付元本と元本返済とは対価関係にありません。元本の返済は貸し手の手元にあった金銭と同額の金銭を貸し手の手元に戻すことに過ぎず、交換的な関係ではないのです。
金銭貸借で分かりにくければ、物の貸借で考えてみてください。例えば、隣のデスクの人からボールペンを借りたとします。借りたボールペンを返したとき、借りた人が貸した人へ対価(反対給付)を与えたとはいえません。もともと相手の所有物であり、相手の手元にあった物を、再び相手の手元へ戻したに過ぎないからです。対価は、ボールペンを借りたお礼に何かをしてあげたときに生じます。
元本返済もこれと同じ理屈で、貸付金の対価にはなりません。借りたお礼に当たる利子が、貸付金の対価です。
なお、対価は経済的数量が必ずしも一致するものではないことに、ご注意ください。貸付金と利子とが金額的に異なっていても、これは対価関係にあります。
2.代物弁済
代物弁済は、債権者の承諾を得て、弁済すべき債務と異なる物(労務その他)を債権者へ提供し、債務消滅という財産的利益を得るものです。すなわち、提供する物と債務の消滅とが対価関係にあります。物の交換価値に着目したものです。
なお、両者の金額が一致している必要はありません。もっとも、代物弁済として提供された物の価額が消滅した債務の額よりも異常に高額であるときは、暴利行為として代物弁済そのものが無効となります。
これらを踏まえて、金銭貸借に係る元本・利子・貸付金および代物弁済の、消費税法上の取扱いを検討します。
1.貸付
貸付金は、既に述べたとおり、利子と対価関係にあります。
したがって、無利子特約のない貸付金の支払は、利子という「対価を得て行う資産の貸付」に該当するところ、消費税法ではこれを非課税としています。
また、無利子特約を付した貸付金の支払は、「対価を得て行う資産の貸付」には該当しないため、消費税の課税対象外(不課税)となります。この点については、消費税法基本通達5−4−5で注意的に規定されています。
2.元本の返済
元本の返済は、既に述べたとおり、貸付金や利子とは対価関係にありません。すなわち、元本の返済は他のいずれとも対価関係になく、これによって対価を得ることがありません。
したがって、元本の返済は「対価を得て行う資産の譲渡」「対価を得て行う資産の貸付」には該当しないため、(元本返済としての現金の授受も含め、)消費税の課税対象外(不課税)となります。
なお、「借入金/現金」という仕訳は、元本の返済という一個の行為を、借入金の減少と現金の減少とに分解したものです。この両者は対価関係にありませんから、借入金が現金の反対給付ということもありません。もっとも、消費税課税要件のひとつに「資産の譲渡」がありますので、上記仕訳では現金の減少=資産の譲渡に着目すべきことは、間違いないものと思われます。これが不課税となるのは、既に述べました。
3.利子
利子は、既に述べたとおり、貸付金と対価関係にあります。言い換えると、利子支払は貸付金という対価を得ておこなう財産の移転です。
したがって、利子の授受は「対価を得て行う資産の譲渡」に該当するところ、消費税法ではこれを非課税としています。
4.代物弁済
代物弁済は、既に述べたとおり、消滅する債務と対価関係にあります。
したがって、代物弁済は「対価を得て行う資産の譲渡」に該当し、消費税法に定める非課税の限定列挙事項に該当しませんので、課税取引となります。
なお、例えば、会社の借入に対して代表取締役が担保提供した不動産が、担保の実行により会社の借入金弁済に代えて代物弁済された場合など、個人の財産が代物弁済に供されたときは、「事業として」の要件を満たさないため不課税取引となります。消費税法基本通達5−1−1(注)1にて、その旨が注意的に掲げられています。(「事業のために」でなく「事業として」が要件であるため、このような結論となります。)
また、消費税関連図書等では、代物弁済を「資産売却および売却資金による返済」という形に分割して説明するものも見られ、これを踏まえたものと思われる投稿も見られますが、適切ではありません。
代物弁済で提供される物の価値は時価で評価するところ、この時価は売却額とは必ずしも一致しません。加えて、そもそも代物弁済は物の交換価値に着目して認められるものであって、売却価値に限った話ではありません。むしろ、代物弁済は売買を通さないことに意義があります。
したがって、消費税法の説明のために上記説明をすることで、その説明の基礎ないし前提であるはずの代物弁済の制度をミスリードしてしまうおそれがあります。ゆえに、好ましい説明とはいえません。若干の齟齬に目を瞑れば、などの前置き付であれば、許容範囲であろうと思います。
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No. | タイトル | 投稿者 | 投稿日時 |
---|---|---|---|
0 | betsuka | 2007/06/08 10:20 | |
1 | 消費税法 | 2007/06/08 12:53 | |
2 | かめへん | 2007/06/08 17:53 | |
3 | karz | 2007/06/08 18:45 | |
4 | 伊藤英明 | 2007/06/09 11:51 | |
5 | karz | 2007/06/09 19:13 | |
6 | かめへん | 2007/06/10 10:55 | |
7 | しかしか | 2007/06/10 16:19 | |
8 | 伊藤英明 | 2007/06/10 18:19 | |
9 | karz | 2007/06/10 19:50 | |
10 | かめへん | 2007/06/11 10:02 | |
11 | 伊藤英明 | 2007/06/12 09:51 | |
12 | かめへん | 2007/06/12 10:05 | |
13 | 伊藤英明 | 2007/06/12 10:45 | |
14 | 2007/06/17 23:07 |
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