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「営業譲渡」というのは、現在の会社法では「事業譲渡」といわれるものです。
一般的に、会社の一部分を他社に売却する場合には、「吸収分割」がよく使われますが(こちらのほうが簡単なので)、しかし法律上の扱いは、「事業譲渡」(営業譲渡)と「吸収分割」は、似て非なるものです。
基本的な考え方として、吸収分割が包括承継(権利義務の一括譲渡)と考えるのに対し、「事業譲渡」は個々の資産の譲渡と考えます。
したがって、会計上も個々の資産の売却として考えればよいかと思います。
<A会社(譲渡会社)の仕訳>
(資産の時価総額1,000、簿価800、負債総額1,100、交付差金100とします。)
(1)資産を時価で売却したものと考えます。
未収金 1,000 / 諸資産800
売却益200
(2)負債を引き継いでもらいます。
諸負債1,100 / 未収金1,000
売却益100
(3)現金で交付差金100を受取ります。
現金100 / 売却益100
(4)これをひとつにまとめます。
諸負債1,100 / 諸資産800
現金100 / 売却益400
結局のところ、諸資産800を譲渡対価1,200で売却し、代金は負債を引き継いでもらうことで1,100を、現金で100を回収したのと同じことになります。
(時価総額1,000より高い金額で売却しているので、A会社側(譲渡会社側)については法人税法上特に問題はありません。・・・納税資金の問題はまた別でしょうが。)
A会社(譲渡会社)は、事業譲渡により譲渡益400がでましたので、これが当期純利益の一部として法人税の課税対象になります。
(当期純損失や繰越欠損金が400以上あればもちろん実際の課税はありません。)
さて、A会社(譲渡会社)にとってややこしいのは消費税の問題です。
「事業譲渡」は個々の資産の譲渡と考えますので、消費税の対象になります。
したがって、個々の資産について、一つ一つ譲渡したものとして、課税売上げ・非課税売上げを計算しなくてはなりません。
1.個々の資産について時価評価額を計算する。(この例では総額1,000になります。)
2.資産の譲渡対価(消滅した負債1,100+受取った現金100=1,200)を個々の資産の時価の割合で按分する。
ただし、さすがに現金預金や金銭債権については額面金額以上の譲渡対価というのは常識的に考えにくいでしょうから、これらの資産以外の資産で、残りの譲渡対価部分を按分するのがよいでしょう。
3.消費税の申告計算に使う数字を確定する。
たとえば、売掛金の譲渡であれば、金銭債権の譲渡ですので、消費税法上は「有価証券等」の譲渡として非課税売上げになりますが、しかし課税売上割合の計算上は非課税売上げとしなくてよいので、無視します。(非課税売上高0円)
しかし、貸付金の譲渡であれば、金銭債権の譲渡として非課税売上げになり、さらに課税売上割合の計算上もその譲渡価額をそのまま使って計算します。
また、現金預金や受取手形の譲渡は、支払手段の譲渡として非課税売上げになりますが、しかし課税売上割合の計算上は非課税売上げとしなくてよいので、無視します。(売掛金と同じ。)
株式の譲渡であれば非課税売上げですが、しかし課税売上割合の計算上は、売却代金(按分した譲渡対価)の5%のみを非課税売上額とすれば足ります。
棚卸資産や固定資産であれば、按分した譲渡対価で課税売上げor非課税売上げにします。
繰延資産であれば、まあ時価評価額は最初からゼロでしょうから、無視します。
<B会社(譲受会社)の仕訳>
1.資産・負債を時価で取得したものと考えます。
(資産の時価総額1,000、負債総額1,100、支払交付差金100とします。)
諸資産1,000 / 諸負債1,100
のれん(営業権)200 / 現金100
黒字部門の譲り受けであれば、これから将来に渡って黒字計上が予想されるわけですから、のれん(営業権)の計上はあってもおかしくありません。
ただまあ、もしできればのれん(営業権)200の計算根拠を、事業譲渡契約書などに明記しておくと良いでしょう。
たとえば、その営業部門の過去ン年間の営業利益の平均値を求め、これが今後ン年間続くものと予想されるが、安全性を考慮し、その70%評価とした結果、200が今回の事業譲渡契約における適正なのれんの評価額である、などなどなど。
(ようするに、もっともらしいヘ理屈ですね。)
こうしておけば、税務署もなかなかそう簡単には、のれん(営業権)の計上についてダメとは言えません。
これを否認するには、これ以上に確実な根拠が必要になりますが、しかしのれん(営業権)計上の確実な根拠なんて、最初から無理ですよねぇ。(笑)
今後本当に黒字が予想されるのであれば、支払交付差金をもっと増やして多めに営業権を計上しておいたほうがB会社(譲受会社)にとっては節税になります。
(のれん(営業権)償却費が損金になるから。)
もちろん、A会社側(譲渡会社側)に赤字がたくさんあり、A会社側で課税されないということが話の大前提ですが。
赤字部門の譲渡であるならば、このあたりのへ理屈のつけかたが非常に難しくなりますが、まあこうすれば当社では確実に黒字化できる見通しであるとか、当社の事業内容とのシナジー効果で将来の収益の獲得に多くの貢献ができる見通しであるなどなど、頑張ってなんとかもっともらしいへ理屈を数字を使ってひねり出してください。
数字を使ってさも合理的に計算されているように税務署を説得できないと、そののれん(営業権)は、相手会社(A社)に対する寄付金とみなされてしまう危険性があるかもしれません。
もしそうなれば、のれん(営業権)償却費は基本的に損金算入できなくなります。
追伸
私はこれと似たような「事業譲渡」を兄弟会社(株主経営者が同一人物)間でやったことがあります。
そのときは黒字部門の譲渡だったので、のれん(営業権)をドバッとかなりたくさん計上しておきました。(ハラハラドキドキ)
しかし、税務調査では、事業譲渡契約書をみせるように言われただけで、結局のれん(営業権)のことについてはまったく触れてくれませんでした。(拍子抜け)
きっと調査官ものれん(営業権)の適正な評価額といわれると、よくわからなかったのだろうと思います。
(幸運なことに、あまり優秀な調査官ではなさそうでしたし。)
「営業譲渡」というのは、現在の会社法では「事業譲渡」といわれるものです。
一般的に、会社の一部分を他社に売却する場合には、「吸収分割」がよく使われますが(こちらのほうが簡単なので)、しかし法律上の扱いは、「事業譲渡」(営業譲渡)と「吸収分割」は、似て非なるものです。
基本的な考え方として、吸収分割が包括承継(権利義務の一括譲渡)と考えるのに対し、「事業譲渡」は個々の資産の譲渡と考えます。
したがって、会計上も個々の資産の売却として考えればよいかと思います。
<A会社(譲渡会社)の仕訳>
(資産の時価総額1,000、簿価800、負債総額1,100、交付差金100とします。)
(1)資産を時価で売却したものと考えます。
未収金 1,000 / 諸資産800
売却益200
(2)負債を引き継いでもらいます。
諸負債1,100 / 未収金1,000
売却益100
(3)現金で交付差金100を受取ります。
現金100 / 売却益100
(4)これをひとつにまとめます。
諸負債1,100 / 諸資産800
現金100 / 売却益400
結局のところ、諸資産800を譲渡対価1,200で売却し、代金は負債を引き継いでもらうことで1,100を、現金で100を回収したのと同じことになります。
(時価総額1,000より高い金額で売却しているので、A会社側(譲渡会社側)については法人税法上特に問題はありません。・・・納税資金の問題はまた別でしょうが。)
A会社(譲渡会社)は、事業譲渡により譲渡益400がでましたので、これが当期純利益の一部として法人税の課税対象になります。
(当期純損失や繰越欠損金が400以上あればもちろん実際の課税はありません。)
さて、A会社(譲渡会社)にとってややこしいのは消費税の問題です。
「事業譲渡」は個々の資産の譲渡と考えますので、消費税の対象になります。
したがって、個々の資産について、一つ一つ譲渡したものとして、課税売上げ・非課税売上げを計算しなくてはなりません。
1.個々の資産について時価評価額を計算する。(この例では総額1,000になります。)
2.資産の譲渡対価(消滅した負債1,100+受取った現金100=1,200)を個々の資産の時価の割合で按分する。
ただし、さすがに現金預金や金銭債権については額面金額以上の譲渡対価というのは常識的に考えにくいでしょうから、これらの資産以外の資産で、残りの譲渡対価部分を按分するのがよいでしょう。
3.消費税の申告計算に使う数字を確定する。
たとえば、売掛金の譲渡であれば、金銭債権の譲渡ですので、消費税法上は「有価証券等」の譲渡として非課税売上げになりますが、しかし課税売上割合の計算上は非課税売上げとしなくてよいので、無視します。(非課税売上高0円)
しかし、貸付金の譲渡であれば、金銭債権の譲渡として非課税売上げになり、さらに課税売上割合の計算上もその譲渡価額をそのまま使って計算します。
また、現金預金や受取手形の譲渡は、支払手段の譲渡として非課税売上げになりますが、しかし課税売上割合の計算上は非課税売上げとしなくてよいので、無視します。(売掛金と同じ。)
株式の譲渡であれば非課税売上げですが、しかし課税売上割合の計算上は、売却代金(按分した譲渡対価)の5%のみを非課税売上額とすれば足ります。
棚卸資産や固定資産であれば、按分した譲渡対価で課税売上げor非課税売上げにします。
繰延資産であれば、まあ時価評価額は最初からゼロでしょうから、無視します。
<B会社(譲受会社)の仕訳>
1.資産・負債を時価で取得したものと考えます。
(資産の時価総額1,000、負債総額1,100、支払交付差金100とします。)
諸資産1,000 / 諸負債1,100
のれん(営業権)200 / 現金100
黒字部門の譲り受けであれば、これから将来に渡って黒字計上が予想されるわけですから、のれん(営業権)の計上はあってもおかしくありません。
ただまあ、もしできればのれん(営業権)200の計算根拠を、事業譲渡契約書などに明記しておくと良いでしょう。
たとえば、その営業部門の過去ン年間の営業利益の平均値を求め、これが今後ン年間続くものと予想されるが、安全性を考慮し、その70%評価とした結果、200が今回の事業譲渡契約における適正なのれんの評価額である、などなどなど。
(ようするに、もっともらしいヘ理屈ですね。)
こうしておけば、税務署もなかなかそう簡単には、のれん(営業権)の計上についてダメとは言えません。
これを否認するには、これ以上に確実な根拠が必要になりますが、しかしのれん(営業権)計上の確実な根拠なんて、最初から無理ですよねぇ。(笑)
今後本当に黒字が予想されるのであれば、支払交付差金をもっと増やして多めに営業権を計上しておいたほうがB会社(譲受会社)にとっては節税になります。
(のれん(営業権)償却費が損金になるから。)
もちろん、A会社側(譲渡会社側)に赤字がたくさんあり、A会社側で課税されないということが話の大前提ですが。
赤字部門の譲渡であるならば、このあたりのへ理屈のつけかたが非常に難しくなりますが、まあこうすれば当社では確実に黒字化できる見通しであるとか、当社の事業内容とのシナジー効果で将来の収益の獲得に多くの貢献ができる見通しであるなどなど、頑張ってなんとかもっともらしいへ理屈を数字を使ってひねり出してください。
数字を使ってさも合理的に計算されているように税務署を説得できないと、そののれん(営業権)は、相手会社(A社)に対する寄付金とみなされてしまう危険性があるかもしれません。
もしそうなれば、のれん(営業権)償却費は基本的に損金算入できなくなります。
追伸
私はこれと似たような「事業譲渡」を兄弟会社(株主経営者が同一人物)間でやったことがあります。
そのときは黒字部門の譲渡だったので、のれん(営業権)をドバッとかなりたくさん計上しておきました。(ハラハラドキドキ)
しかし、税務調査では、事業譲渡契約書をみせるように言われただけで、結局のれん(営業権)のことについてはまったく触れてくれませんでした。(拍子抜け)
きっと調査官ものれん(営業権)の適正な評価額といわれると、よくわからなかったのだろうと思います。
(幸運なことに、あまり優秀な調査官ではなさそうでしたし。)
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