>法人成りによる個人事業の引継ぎの場合、個人事業の最後の貸借は未収金しか残らないということでしょうか?

そのとおりです。
ただ単なる資産の売却ですから、その法人に対する売却代金の未収債権が最後に残るわけですね。
(今回は現物出資方式ではないので、株式にはならない。)

そして後日法人から支払われれば、それもなくなります。


ちなみに、個人事業者の最後の確定申告において注意すべきなので、消費税の計算です。

個々の資産は時価=簿価で売却していますから、この法人成りによる資産の譲渡による所得(利益)は基本的に生じません。
(営業権売却益はやらないとした場合。)

そのため、所得税の確定申告では、事業用固定資産の譲渡を譲渡所得で計算しても譲渡所得はゼロになります。
そのため、めんどくさかったら全部事業所得でやってしまうという超手抜きな申告方法も考えられます。(笑)

しかし、所得(利益)はなくても、資産の譲渡対価が消費税の課税対象にはなるという点に注意が必要です。

所得税における所得区分が何になろうとも、消費税の課税対象の有無とは関係ありません。
つまり、事業所得になろうが譲渡所得になろうが(あるいは他の所得になろうが)、商品や事業用固定資産の譲渡は消費税の計算上、あくまでも「課税売上げ」「非課税売上げ」になる点に注意してください。

前述の仕訳でいえば、消費税法上の区分は、
 ・現金預金・・・支払手段の譲渡であり「非課税売上げ」
 ・売掛金・・・消費税法上は有価証券に類するもの(金銭債権)の譲渡であり「非課税売上げ」
 ・建物、器具備品・・・もちろん「課税売上げ」
 ・商品の売上・・・もちろん「課税売上げ」
となります。

このうち、「支払手段の譲渡による非課税売上げ」は、課税売上割合の計算上、除外することになっていますので(令48条2項)、結局のところ、消費税の計算にはまったく影響しません。
そのため、実際の仕訳では、消費税の「対象外」としてしまうことをお勧めします。

「売掛金の譲渡による非課税売上げ」もまた支払手段と同様に、課税売上割合の計算上、除外することになっていますので(令48条2項)、これもまた消費税の計算にはまったく影響しません。
そのため実際の仕訳では先ほどと同様に、消費税の「対象外」としてしまうことをお勧めします。

この個人の最後の確定申告では、商品売上が事業所得、建物が分離・譲渡所得になりますが、所得税の所得区分に関係なく、消費税の対象となるものを拾い忘れないようにしてください。
(もちろん、免税事業者であれば関係ありませんから無視してください。)


一方、個人側において「課税売上げ」となったものは、法人側においてはもちろん「課税仕入れ」となります。
具体的にいうと、建物、器具備品、仕入が「課税仕入れ」になります。