書類の保存の基本とe-文書法
「e−文書法」って聞いたことがありませんか? これは平成16年に成立した法律で正式名称を「
民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」といいます。「電子文書保存法」ともいわれます。
平成17年4月から、一定の要件を満たすと、これまで紙の形で保存することが決められていた文書を、データの形で保存することが認められるようになります。
とはいえ、何をいつまで保存するかを、この法律ひとつで決めているわけではありません。
企業に関係する、文書の保存を義務付ける法律というのは、
・法人税法 ・消費税法 ・国税通則法 ・商法 ・商法特例法
・証券取引法 ・労働基準法 ・健康保険法 ・労働者災害補償保険法と、いろいろとあります(公務員や医療に関連するものなんかを含めて、e-文書法成立に伴って250以上の法律が一括改正されました)。
たとえば商法には「商業帳簿及其ノ営業に関スル重要ナル書類」を10年
労働基準法には「労働関係に関する重要な書類」を3年
保存しなければならないという規定があります。
法律によって保存すべき期限が異なる場合もあります(賃金台帳は労基法上では3年保存でよいのですが、国税通則法では7年保存が義務づけられています)。
法定保存文書をとっておかなかったからといって“必ず”お咎めを受けるとは限りませんが、訴訟になったり、税務署や労働基準監督署の調査が入ったりして、法令に従っていなかったことが大変な事態を引き起こす可能性は小さくないので、注意が必要です。
書類の保存期間例
ここでは、いわゆる決算書や賃金台帳などの経理や労務に関する書類が、どのような法令により、どれくらいの期間、保存することを義務付けられているか説明します。
下記の例は、ごく一般的な書類についてまとめました
保存期間 | 法令 | 文書の種類 |
永 久 | 法令で定められてはいませんが、永久保存とするのが望ましいと思われます | - 定款
- 登記関係書類
- 訴訟関係書類
- 特許など知的所有権に関する書類
- 社則・社規
|
10年 | 商法 (商法第36条)※1 | - 「商業帳簿」
会計帳簿(日記帳、仕訳帳、総勘定元帳)、貸借対照表、損益計算書、附属明細書 - 「営業に関する重要な書類」
株主名簿、社債原簿、株主総会議事録、取締役会議事録、営業報告書、利益処分案 (損失処理案)、このほか紛争が生じた場合に重要な証拠となり得る書類(例:契約書)
|
7年 | 法人税法、所得税法 (法人税法施行規則第59条、所得税法施行規則第63条) | - 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、固定資産台帳、売掛帳、買掛帳、経費帳
- 棚卸表、貸借対照表、損益計算書、決算に関して作成された書類
- 注文書、契約書、送り状、領収書、見積書、その他これらに準ずる書類
(例:請求書)
|
国税通則法 (国税通則法第70条〜第73条) | - 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書
- 源泉徴収簿
|
5年 | 労働安全衛生法(労働安全衛生規則第51条) | |
4年 | 雇用保険法 (雇用保険法施行規則第143条) | |
3年 | 労働基準法 (労働基準法第109条) | - 労働者名簿
- 賃金台帳
- 雇入・解雇・災害補償・賃金その他労働関係に関する重要な書類
|
労働保険の保険料の徴収等に関する法律 (労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則第70条) | |
労働者災害補償保険法 (労働者災害補償保険法施行規則第51条) | |
労働安全衛生法(労働安全衛生規則第23条) | - 安全委員会議事録
- 衛生委員会議事録
- 安全衛生委員会議事録
|
2年 | 健康保険法 (健康保険法施行規則第34条) | |
厚生年金法 (厚生年金保険法施行規則第28条) | |
雇用保険法 (雇用保険法施行規則第143条) | |
※1)
商法第36条において、商人は10年間、「商業帳簿」および「営業に関する重要な書類」を保存しなければならない、と規定されています。これは、これらの書類が後日紛争が生じた場合に有力な証拠書類となることなどから、企業の社会的使命としてこれらの書類の保存を義務づけたものです。それでは、その「商業帳簿」や「営業に関する重要な書類」が具体的にはどんなものをいうのかというと、商法上、必ずしも明確に規定されてはおりません。しかし、一般的にはそれぞれ表に掲げたような書類をいうものと解されております。
書類の保存の具体例
参考になるかどうか分かりませんが、ここでは私の会社が実行している書類の保存方法をご紹介いたします。
◆年度内の帳票等◆
伝票・総勘定元帳など、毎日使うものや問い合わせに対する資料は私の机の右引き出しに入っています。しかし、
請求書の綴りや
領収書の前月までの綴りなど、週に1回くらいしか見ないものは社内の書類棚に保管しています。その場合、やはり使用する人のなるべく近くに書類棚が配置されるように事務所のレイアウトを考えます。
◆決算後の帳票等◆
前年のデータを参考にすることが多い、
総勘定元帳は私の机の右引き出しに入っています。又、
請求書・領収書のように前年の実績を参考にすることが多い資料はまだ保存箱に収納せずに社内の書類棚に入れておきます。その他、年に数回しか開かないような帳票、一覧表などは
「平成○年分経理資料」と明記した保存箱に入れて保管しておきます。
◆3年たった時点で入れ替え◆
帳票など、3年ほど経つとほとんど帳票なども開かなくなりますね。又そのころになるとそろそろ保存期間ごとに区分することができるようになります。そこで、保存しなければならないものと上司と相談して処分するものとを区分けして保存し直していきます。
今までは「平成○年経理資料」と書いた箱に入っていたものを今度は
「○○年保存義務書類」と書いた箱に入れ直しします。そうすることによって、今度は保存しなければならないものだけを残すことが出来、いらなくなった書類の処分がしやすくなります。
書類の多い会社では、この経理書類だけでも倉庫があふれてしまうということになりますので、必要な書類だけを効率よく保管し、不必要な書類で倉庫を埋めるというようなことにならないように工夫しましょう。
「e−文書法」って聞いたことがありませんか? これは平成16年に成立した法律で正式名称を「
民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」といいます。「電子文書保存法」ともいわれます。
平成17年4月から、一定の要件を満たすと、これまで紙の形で保存することが決められていた文書を、データの形で保存することが認められるようになります。
とはいえ、何をいつまで保存するかを、この法律ひとつで決めているわけではありません。
企業に関係する、文書の保存を義務付ける法律というのは、
・法人税法 ・消費税法 ・国税通則法 ・商法 ・商法特例法
・証券取引法 ・労働基準法 ・健康保険法 ・労働者災害補償保険法と、いろいろとあります(公務員や医療に関連するものなんかを含めて、e-文書法成立に伴って250以上の法律が一括改正されました)。
たとえば
商法には「商業帳簿及其ノ営業に関スル重要ナル書類」を10年
労働基準法には「労働関係に関する重要な書類」を3年
保存しなければならないという規定があります。
法律によって保存すべき期限が異なる場合もあります(賃金台帳は労基法上では3年保存でよいのですが、
国税通則法では7年保存が義務づけられています)。
法定保存文書をとっておかなかったからといって“必ず”お咎めを受けるとは限りませんが、訴訟になったり、税務署や労働基準監督署の調査が入ったりして、法令に従っていなかったことが大変な事態を引き起こす可能性は小さくないので、注意が必要です。
ここでは、いわゆる
決算書や賃金台帳などの経理や労務に関する書類が、どのような法令により、どれくらいの期間、保存することを義務付けられているか説明します。
下記の例は、ごく一般的な書類についてまとめました
保存期間 | 法令 | 文書の種類 |
永 久 | 法令で定められてはいませんが、永久保存とするのが望ましいと思われます | - 定款
- 登記関係書類
- 訴訟関係書類
- 特許など知的所有権に関する書類
- 社則・社規
|
10年 | 商法 (商法第36条)※1 | - 「商業帳簿」
会計帳簿(日記帳、仕訳帳、総勘定元帳)、貸借対照表、損益計算書、附属明細書 - 「営業に関する重要な書類」
株主名簿、社債原簿、株主総会議事録、取締役会議事録、営業報告書、利益処分案 (損失処理案)、このほか紛争が生じた場合に重要な証拠となり得る書類(例:契約書)
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7年 | 法人税法、所得税法 (法人税法施行規則第59条、所得税法施行規則第63条) | |
国税通則法 (国税通則法第70条〜第73条) | |
5年 | 労働安全衛生法(労働安全衛生規則第51条) | |
4年 | 雇用保険法 (雇用保険法施行規則第143条) | |
3年 | 労働基準法 (労働基準法第109条) | - 労働者名簿
- 賃金台帳
- 雇入・解雇・災害補償・賃金その他労働関係に関する重要な書類
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労働保険の保険料の徴収等に関する法律 (労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則第70条) | |
労働者災害補償保険法 (労働者災害補償保険法施行規則第51条) | |
労働安全衛生法(労働安全衛生規則第23条) | - 安全委員会議事録
- 衛生委員会議事録
- 安全衛生委員会議事録
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2年 | 健康保険法 (健康保険法施行規則第34条) | |
厚生年金法 (厚生年金保険法施行規則第28条) | |
雇用保険法 (雇用保険法施行規則第143条) | |
※1)
商法第36条において、商人は10年間、「商業帳簿」および「営業に関する重要な書類」を保存しなければならない、と規定されています。これは、これらの書類が後日紛争が生じた場合に有力な証拠書類となることなどから、企業の社会的使命としてこれらの
書類の保存を義務づけたものです。それでは、その「商業帳簿」や「営業に関する重要な書類」が具体的にはどんなものをいうのかというと、
商法上、必ずしも明確に規定されてはおりません。しかし、一般的にはそれぞれ表に掲げたような書類をいうものと解されております。
参考になるかどうか分かりませんが、ここでは私の会社が実行している
書類の保存方法をご紹介いたします。
◆年度内の帳票等◆
伝票・総勘定元帳など、毎日使うものや問い合わせに対する資料は私の机の右引き出しに入っています。しかし、
請求書の綴りや
領収書の前月までの綴りなど、週に1回くらいしか見ないものは社内の書類棚に保管しています。その場合、やはり使用する人のなるべく近くに書類棚が配置されるように事務所のレイアウトを考えます。
前年のデータを参考にすることが多い、
総勘定元帳は私の机の右引き出しに入っています。又、
請求書・領収書のように前年の実績を参考にすることが多い資料はまだ保存箱に収納せずに社内の書類棚に入れておきます。その他、年に数回しか開かないような帳票、一覧表などは
「平成○年分経理資料」と明記した保存箱に入れて保管しておきます。
◆3年たった時点で入れ替え◆
帳票など、3年ほど経つとほとんど帳票なども開かなくなりますね。又そのころになるとそろそろ保存期間ごとに区分することができるようになります。そこで、保存しなければならないものと上司と相談して処分するものとを区分けして保存し直していきます。
今までは「平成○年経理資料」と書いた箱に入っていたものを今度は
「○○年保存義務書類」と書いた箱に入れ直しします。そうすることによって、今度は保存しなければならないものだけを残すことが出来、いらなくなった書類の処分がしやすくなります。
書類の多い会社では、この経理書類だけでも倉庫があふれてしまうということになりますので、必要な書類だけを効率よく保管し、不必要な書類で倉庫を埋めるというようなことにならないように工夫しましょう。